なぜ?交通事故治療の保険診療と自由診療

なぜ?交通事故治療の保険診療と自由診療

交通事故で負傷した場合、病院で受ける治療には、保険診療と自由診療があります。この2つはどう違うのでしょうか。また、交通事故に遭ったら、どちらで治療を受けるべきなのでしょうか。あまり知られていない、交通事故治療の保険診療と自由診療の違いについて解説します。
 

交通事故で負傷した場合の治療

交通事故で負傷した際は、健康保険や労災が使える保険診療を選びましょう。もし病院で自由診療をすすめられても、保険診療で治療を受けてください。もし相手側に100%の過失があれば、自由診療でもいいかもしれませんが、そうでなければ絶対にやめましょう。

実際問題として、相手側の過失が100%ということはまずありませんし、たとえ100%であっても、今後過失割合が変わることもあり得ます。また、相手の過失が100%であっても、健康保険を使う保険診療にすると、保険会社が負担する治療費が少なくて済むので、その分慰謝料が上乗せされることもあります。もし自由診療にすると、治療費は全額自己負担で、しかも保険診療よりも高くなる傾向があります。

このように、いろんな方面から見ても、自由診療よりも保険診療のほうがいいのです。ではなぜ、病院が自由診療をすすめるケースがあるのでしょうか。それは、自由診療にすると病院が得をするからです。自由診療の診療報酬単価は、病院が自由に設定できるので保険診療よりも儲かるのです。しかし、病院が得をする分、被害者も加害者も損することになるので、応じないほうが自分のためにも加害者のためにもなります。
 

そもそも健康保険とは

上記のように、保険診療では健康保険を使いますが、そもそも健康保険とは何でしょうか。健康保険には、政府管掌健康保険、組合管掌健康保険のほか、国民健康保険があります。政府管掌健康保険は、規模の小さい会社に勤める人が掛ける保険で、組合管掌健康保険は大きな会社に勤める人が掛ける保険です。国民健康保険は、上記の保険に加入できない自営業者などが掛ける保険です。

日本には国民皆保険制度があり、すべての国民が上記のどれかの健康保険に加入しています。健康保険に加入していると、たとえ自分の過失であっても、怪我をした場合は3割程度の負担で治療を受けることができます。ちなみに、交通事故で負傷した場合に健康保険を使うには、「第三者行為による傷病届」を保険者に提出して治療を受け、あとで治療費を加害者に請求する流れになります。
 

自由診療とは

自由診療とは、健康保険を使わないで治療することです。自由診療という言葉はあまり聞き慣れませんが、それは日本に国民皆保険制度があるからです。国民皆保険制度は世界的に珍しい保険制度で、世界に誇るべきものです。国民皆保険制度がないアメリカなどでは、簡単な手術を受けるだけでも、百万単位の治療費を請求されてしまいます。

そのため、民間保険会社の保険に加入する人も多いのですが、富裕層は加入できても、貧困層は民間の保険に加入することも、ままならないという実態があります。日本にいると、あまり健康保険のありがたさは感じませんが、貧富の差に関係なく健康保険に加入できるのは、非常に画期的なことなのです。自由診療は、健康保険を使う保険診療に比べて、診療報酬が割高になります。

それは、健康保険の場合は、診療報酬単価が10円と決められているのに対して、自由診療の場合は制限がないからです。自由診療の単価は、病院が勝手に決めていいことになっていますが、治療代をめぐって過去に何度も裁判が行われており、現在では12円から20円程度に落ち着いています。

このように、自由診療は治療代が高いのですが、その分メリットもあります。健康保険を使うと、治療内容や治療費に制限があり、何でも好きな治療ができるわけではありません。治療代に関して「保険適用外」という言葉を聞くことがありますが、これは健康保険では扱えない治療のことで、癌などの最先端医療の中には、保険適用外となる治療があります。

保険適用外の治療は自由診療となり、高額な治療代がかかります。また、健康保険では、薬機法で許認可された医薬品しか使えませんんが、自由診療の場合は制限なく使うことができます。自由診療にはこのような利点もありますが、交通事故の場合に自由診療にするメリットは特に見当たりません。
 

交通事故で健康保険を使う際の注意

交通事故では、健康保険を使うべきではないという考え方もあります。それは、健康保険が自分の不注意で自分が怪我をしたり、病気になった場合に使うための保険だからです。これに対して、交通事故の場合は相手から怪我をさせられるので、自由診療にすべきだというのですが、それでは被害者が大きな不利益を被る可能性があります。

たとえば、被害者の過失割合が大きい場合は、健康保険を使うことによって治療費を抑えられる分、自賠責から休業補償などが捻出できる可能性があります。また、加害者が自賠責しか加入していなくて、被害額が自賠責の範囲を超える場合にも、健康保険を使うことで被害者を救済できる可能性が高くなるのです。

交通事故で健康保険を使うには、病院に保険証を提示したのち、第三者行為による傷病届けの手続きを行いますが、病院によっては交通事故で健康保険を使うことに、難色をしめす場合もあります。こうなると、何も知識がなければ病院の言いなりになってしまうので、交通事故でも健康保険が使えることは覚えておきましょう。
 

交通事故における過剰診療の問題

交通事故による負傷を治療する場合に、過剰診療という問題があります。病院が行う治療が、必要以上のものであると保険会社が判断した場合、治療費の支払いを拒否することがあります。これが過剰診療の問題です。もし病院が利益のために、診療報酬の点数が高い治療ばかりを行ったり、必要以上の治療を施すと、通常よりも高い治療費が保険会社に請求されることになります。

保険会社は余分な治療費を払いたくないので、過剰診療ではないかと言ってきます。交通事故の被害者は、医師に言われるまま治療を受けているだけなのですが、裏では病院と保険会社の間で、このような問題が起きていることもあるのです。病院が利益を優先して、過剰な診療を行うのは十分にあり得ることであり、それに対して保険会社が自衛のために、過剰診療ではないかと抗議するのも当然のことでしょう。

しかし、過剰診療を理由に、保険会社がそれ以降の支払いを拒否すると、困るのは交通事故の被害者なのです。保険会社に支払いを拒否されると、交通事故の被害者は自費で治療費を払うことになります。もし払えないで滞納すると、今度は病院と被害者の間で揉めることになり、こうなると困るのは交通事故の被害者なのです。交通事故の被害者は、1日も早く社会復帰したくて通院しているだけです。

しかし、交通事故に遭っただけでも大きな災難なのに、さらに過剰診療というトラブルに見舞われることがあります。すべての原因は、一番の被害者を置き去りにして、自身の利益を優先しようとする病院と保険会社にあります。また、このような現実があるにもかかわらず、この問題にメスを入れようとしない厚労省にも責任の一端があります。
 

まとめ

交通事故で負傷した場合の治療には、保険診療と自由診療があります。自由診療をすすめる病院もありますが、健康保険が使える保険診療を受けることをおすすめします。というのは、自由診療は病院にとっては得なのですが、患者にとっては不利益となる場合が多いからです。しかし、自由診療の場合は保険診療のように、行える治療法に制限がないので、自由に治療方法を選択できるというメリットがあります。

健康保険には、政府管掌健康保険や組合管掌健康保険のほか、国民健康保険があります。これらの健康保険を使って治療するのが保険診療で、国民皆保険制度のある日本では保険診療が主流になっています。しかし、海外の多くの国では国民皆保険制度がないため、自由診療が中心です。交通事故の治療では、過剰診療のために保険会社から支払いを拒否される場合があるので、注意が必要です。